こんにちは。Johnです。

日本のマイワシ漁業が国際認証であるMSCの取得を断念したという報道が出ました。
記事の多くは、中国やロシアが漁獲制限をしていないことが原因であるかのように書かれています。
しかし、この問題の本質はそこではありません。
今回の件は、日本の水産資源管理そのものが問われている事例です。
MSC(海洋管理協議会)は、持続可能な漁業に対して与えられる国際認証です。
資源を減らさず将来にわたって利用できる状態であるかを、科学的な評価に基づいて判断します。
評価では、資源の状態、漁獲の影響、管理体制の実効性が問われます。
特に重要なのは、MSY(最大持続生産量)という科学的基準に基づき、資源を減らさない範囲で漁獲が制御されているかどうかです。
日本ではあまりなじみがない制度ですが、ヨーロッパではこのMSC認証の有無が強く国民から意識されています。
持続可能な漁業であることを証明できなければ、流通や小売の段階で選ばれにくくなり、結果として輸出が難しくなる場合があります。
MSCは単なるラベルではなく、国際市場で取引するための条件の一つになっています。
マイワシは国境を越えて回遊する共有資源であり、国際機関であるNPFCの枠組みで管理されています。
そのため、中国やロシアが十分な漁獲制限を行っていないことは確かに問題です。
MSCが評価するのは、日本の資源管理が科学的に整合しているかどうかです。
実際、マイワシ資源について漁獲圧が持続可能な水準を大きく上回っていることを日本は認めています。
この状態では、仮に他国(中国・ロシア)が存在しなかったとしても、過剰漁獲により認証取得は困難であると考えるのが自然です。
一方で、今回MSC認証を目指した取り組みそのものは評価されるべき点です。
しかし、日本の現状を見ると、資源管理の面で根本的な課題が残っています。
具体的には、MSYに基づいたTACが一貫して設定・運用されているのか、そして未成熟のイワシが保護されているのかという点です。
この二つが確実に守られなければ資源は維持できません。
このどちらか一つでも欠ければ資源は減るため、この時点でMSCの基準を満たすことはできません。
MSCが求めているのはまさにこの部分であり、科学的根拠に基づく漁獲制限と、再生産前の個体(未成熟魚)を守る仕組みです。
これが機能していない状態では、認証取得は現実的ではありません。
つまり、地域の企業や漁協の努力だけで解決できる問題ではないということです。
資源管理は本来、国がルールを定めて全体として運用するものであり、部分的な取り組みでは限界があります。
まず日本国内の管理を隙なく整え、その上で初めて他国に同様の水準を求めるべきです。
そうでなければ、国際的にも説得力を持つことはできません。

このグラフは、日本のマイワシ漁獲量の長期推移を示したものです。
漁獲能力の向上や環境要因により、1980年代には400万トンを超える水準に達していた漁獲量が、その後急激に減少し、現在は1割程度にまで落ち込んでいることが分かります。
一時的な変動ではなく、長期的な低下傾向である点が重要です。
マイワシの増減は環境の影響を強く受けると言われていますが、ここまでの激減は自然要因だけで説明できるものではありません。
資源管理が適切に機能していれば、資源が減少した時点で漁獲圧を下げ、回復を待つことで極端な落ち込みは防がれるはずです。
しかし実際には、資源が減少した後も漁獲が継続され、回復しきれない状態が長く続いています。
本来であれば、資源が減少した段階で漁獲量を大きく下げる、あるいは操業を制限する必要があります。
ペルーやノルウェーのように資源管理が機能している国では、この判断が実際に行われています。
一方で日本では、MSYに基づく漁獲制御や未成熟魚の保護が十分に機能しているとは言い難く、資源の減少を止める仕組みが弱い状態にあります。
その結果が、この長期的な減少として表れています。
つまりこのグラフは、単なる漁獲量の変化ではなく、「資源管理がどの程度機能してきたか」を示す結果そのものです。
もう一つ見落としてはならないのが、日本のマイワシが魚粉向けに大量利用されているという構造です。
魚粉は養殖や畜産の餌の原料であり、小さい魚でもそのまま価値になります。
つまり、成長してから取る必要がなく、未成熟の個体であっても漁獲の対象になりやすいという特徴があります。
魚は未成熟の段階(産卵前)で漁獲してしまうと、将来的に産卵可能な大人の魚が減り、総産卵量が減り、稚魚の数が減る事で資源を確実に減らします。
これを成長乱獲と呼びます。
もっと簡単に言うと、「子供の魚を殺してしまうと資源が減る」と言う事です。

さらに、まき網漁業は群れごと一度に漁獲するため、小さい個体を避けることが難しい漁法です。
その結果、未成熟の小イワシまでまとめて漁獲されやすくなり、繁殖前に資源を大きく削る成長乱獲のリスクが高まります。
しかしここで重要なのは、魚粉利用そのものが問題なのではないという点です。
実際にペルーやノルウェーのように、小型魚を魚粉原料として利用している国でも、資源が維持されている事例は存在します。
これらの国では、資源量に応じて漁獲量を厳格に制限し、状況が悪化すれば操業を停止するなど、科学的根拠に基づいたルールが実際に機能しています。
未成熟魚の割合が高ければ漁を止めるといった仕組みも含め、資源を減らさないための制御が徹底されています。
つまり、同じ魚粉用途であっても、持続可能かどうかは「利用方法」ではなく「管理の厳格さ」によって決まります。
一方で日本の場合は、小型魚でも売買が成立してしまう魚粉構造に対して、それを抑える制度が十分に機能しているとは言い難い状況です。
シラスなどの稚魚、ツバス・小サバ・小アジなどの幼魚も当たり前に漁獲され、成長乱獲が日常となっている国です。
この状態では、MSYに基づく管理や未成熟魚の保護も実効性を持ちにくく、結果として資源を減らす方向に働きやすくなります。
今回のMSC認証断念は、中国やロシアの問題と、日本の管理の問題が重なった結果です。
ただし、他国のせいだけにする説明では本質は見えません。
取り組み自体は評価されるべきですが、それ以上に求められるのは、まずは自国の資源管理を科学的に整えることです。
国が明確なルールを定め、MSYに基づいた漁獲制御と未成熟魚の保護を徹底しない限り、MSC取得は現実的ではありません。
それができて初めて、日本の水産業の将来を現実的に語ることができます。
それではまた。






日本のマイワシ漁業が国際認証であるMSCの取得を断念したという報道が出ました。
記事の多くは、中国やロシアが漁獲制限をしていないことが原因であるかのように書かれています。
しかし、この問題の本質はそこではありません。
今回の件は、日本の水産資源管理そのものが問われている事例です。
要約
- マイワシは共有資源であり国際管理が必要です。
- 中国・ロシアの問題だけでは今回の認証断念は説明できません。
- 日本自身も持続可能水準を超えた漁獲状態にあることが問題です。
- 魚粉用途は成長乱獲を招きやすく、厳格な管理が不可欠です。
- 日本単独で見てもMSC基準を満たすのは難しい状態です。
目次
MSCとは何か
MSC(海洋管理協議会)は、持続可能な漁業に対して与えられる国際認証です。資源を減らさず将来にわたって利用できる状態であるかを、科学的な評価に基づいて判断します。
評価では、資源の状態、漁獲の影響、管理体制の実効性が問われます。
特に重要なのは、MSY(最大持続生産量)という科学的基準に基づき、資源を減らさない範囲で漁獲が制御されているかどうかです。
日本ではあまりなじみがない制度ですが、ヨーロッパではこのMSC認証の有無が強く国民から意識されています。
持続可能な漁業であることを証明できなければ、流通や小売の段階で選ばれにくくなり、結果として輸出が難しくなる場合があります。
MSCは単なるラベルではなく、国際市場で取引するための条件の一つになっています。
なぜ今回の問題は日本の管理も問われているのか
マイワシは国境を越えて回遊する共有資源であり、国際機関であるNPFCの枠組みで管理されています。そのため、中国やロシアが十分な漁獲制限を行っていないことは確かに問題です。
MSCが評価するのは、日本の資源管理が科学的に整合しているかどうかです。
実際、マイワシ資源について漁獲圧が持続可能な水準を大きく上回っていることを日本は認めています。
この状態では、仮に他国(中国・ロシア)が存在しなかったとしても、過剰漁獲により認証取得は困難であると考えるのが自然です。
一方で、今回MSC認証を目指した取り組みそのものは評価されるべき点です。
しかし、日本の現状を見ると、資源管理の面で根本的な課題が残っています。
具体的には、MSYに基づいたTACが一貫して設定・運用されているのか、そして未成熟のイワシが保護されているのかという点です。
この二つが確実に守られなければ資源は維持できません。
このどちらか一つでも欠ければ資源は減るため、この時点でMSCの基準を満たすことはできません。
MSCが求めているのはまさにこの部分であり、科学的根拠に基づく漁獲制限と、再生産前の個体(未成熟魚)を守る仕組みです。
これが機能していない状態では、認証取得は現実的ではありません。
つまり、地域の企業や漁協の努力だけで解決できる問題ではないということです。
資源管理は本来、国がルールを定めて全体として運用するものであり、部分的な取り組みでは限界があります。
まず日本国内の管理を隙なく整え、その上で初めて他国に同様の水準を求めるべきです。
そうでなければ、国際的にも説得力を持つことはできません。
マイワシ資源はなぜここまで減ったのか

このグラフは、日本のマイワシ漁獲量の長期推移を示したものです。
漁獲能力の向上や環境要因により、1980年代には400万トンを超える水準に達していた漁獲量が、その後急激に減少し、現在は1割程度にまで落ち込んでいることが分かります。
一時的な変動ではなく、長期的な低下傾向である点が重要です。
マイワシの増減は環境の影響を強く受けると言われていますが、ここまでの激減は自然要因だけで説明できるものではありません。
資源管理が適切に機能していれば、資源が減少した時点で漁獲圧を下げ、回復を待つことで極端な落ち込みは防がれるはずです。
しかし実際には、資源が減少した後も漁獲が継続され、回復しきれない状態が長く続いています。
本来であれば、資源が減少した段階で漁獲量を大きく下げる、あるいは操業を制限する必要があります。
ペルーやノルウェーのように資源管理が機能している国では、この判断が実際に行われています。
一方で日本では、MSYに基づく漁獲制御や未成熟魚の保護が十分に機能しているとは言い難く、資源の減少を止める仕組みが弱い状態にあります。
その結果が、この長期的な減少として表れています。
つまりこのグラフは、単なる漁獲量の変化ではなく、「資源管理がどの程度機能してきたか」を示す結果そのものです。
魚粉構造と資源減少の関係
もう一つ見落としてはならないのが、日本のマイワシが魚粉向けに大量利用されているという構造です。魚粉は養殖や畜産の餌の原料であり、小さい魚でもそのまま価値になります。
つまり、成長してから取る必要がなく、未成熟の個体であっても漁獲の対象になりやすいという特徴があります。
魚は未成熟の段階(産卵前)で漁獲してしまうと、将来的に産卵可能な大人の魚が減り、総産卵量が減り、稚魚の数が減る事で資源を確実に減らします。
これを成長乱獲と呼びます。
もっと簡単に言うと、「子供の魚を殺してしまうと資源が減る」と言う事です。
さらに、まき網漁業は群れごと一度に漁獲するため、小さい個体を避けることが難しい漁法です。
その結果、未成熟の小イワシまでまとめて漁獲されやすくなり、繁殖前に資源を大きく削る成長乱獲のリスクが高まります。
しかしここで重要なのは、魚粉利用そのものが問題なのではないという点です。
実際にペルーやノルウェーのように、小型魚を魚粉原料として利用している国でも、資源が維持されている事例は存在します。
これらの国では、資源量に応じて漁獲量を厳格に制限し、状況が悪化すれば操業を停止するなど、科学的根拠に基づいたルールが実際に機能しています。
未成熟魚の割合が高ければ漁を止めるといった仕組みも含め、資源を減らさないための制御が徹底されています。
つまり、同じ魚粉用途であっても、持続可能かどうかは「利用方法」ではなく「管理の厳格さ」によって決まります。
一方で日本の場合は、小型魚でも売買が成立してしまう魚粉構造に対して、それを抑える制度が十分に機能しているとは言い難い状況です。
シラスなどの稚魚、ツバス・小サバ・小アジなどの幼魚も当たり前に漁獲され、成長乱獲が日常となっている国です。
この状態では、MSYに基づく管理や未成熟魚の保護も実効性を持ちにくく、結果として資源を減らす方向に働きやすくなります。
結論
今回のMSC認証断念は、中国やロシアの問題と、日本の管理の問題が重なった結果です。ただし、他国のせいだけにする説明では本質は見えません。
取り組み自体は評価されるべきですが、それ以上に求められるのは、まずは自国の資源管理を科学的に整えることです。
国が明確なルールを定め、MSYに基づいた漁獲制御と未成熟魚の保護を徹底しない限り、MSC取得は現実的ではありません。
それができて初めて、日本の水産業の将来を現実的に語ることができます。
出典
- 北太平洋漁業委員会(NPFC)資源評価資料
- MSC Fisheries Standard v3.1
- 日本政府提出資料(NPFC会合資料)
- 水産庁公開資料(TAC・資源管理関連)
- e-Stat「海面漁業魚種別漁獲量累年統計」
それではまた。


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