
日本の漁業は今、かつてない危機に直面しています。
1984年に1282万トンあった漁獲量は、2024年には363万トンと40年間で3分の1以下にまで落ち込みました(水産庁統計)。
この衰退を「地球温暖化のせい」と説明する声もありますが、それは事実ではありません。
もし温暖化が主因であれば、世界中で同じように漁獲量が減っていなければ矛盾します。
ところが現実には、世界全体の漁業・養殖業の生産量は増え続け、日本だけが激減しているのです。
つまり魚が減った本当の原因は、温暖化ではなく資源管理の不備なのです。
世界と日本の漁業生産量の推移
世界全体では漁業・養殖業の生産量が増え続けています。
これは国際連合食糧農業機関(FAO)の統計でも明らかで、2018年には2億トンを突破しました。
一方で日本は1984年をピークに減少の一途をたどり、40年間で3分の1以下にまで落ち込んでいます。
つまり、魚が減っているのは日本だけであり、温暖化を主因とする説明は成り立たないのです。
以下の表がその実態を示しています。
| 年 | 世界全体(FAO推計) | 日本(漁業・養殖合計) |
|---|---|---|
| 1984 | 7,000万 | 1,282万 |
| 2000 | 12,000万 | 480万 |
| 2010 | 18,000万 | 420万 |
| 2018 | 20,000万 | 400万 |
| 2024 | 22,000万超 | 363万 |
世界はなぜ増えているのか
世界全体の生産量は1990年代以降、天然漁業が横ばいを維持しつつ、養殖の拡大によって総量が増加してきました。
天然の漁獲が横ばいで安定しているのは、資源が減らないように漁獲枠によって「獲る量を制限」しているからです。
本来、天然の魚は放っておけば自然に再生産され、資源は勝手に増えていきます。
各国はその再生産力を壊さないよう、明確な漁獲制限を設けて「減らさずに使い続ける」仕組みを作りました。
そして、不足分を補助的に養殖で賄うことで、全体の供給量をさらに拡大してきたのです。
一方、日本は資源管理を徹底してこなかったために天然資源を痩せさせ、養殖も伸び悩み、結果として世界と真逆の衰退に陥りました。
本当の原因:資源管理の差
資源を増やして維持した国がやっていること
- 科学調査に基づいた漁獲枠(TAC)を設定し、上限に達すれば漁を停止する
- 小さい魚を獲らないための明確なサイズ規制
- 違反に対する厳格な罰則
- 消費者にも「持続可能な漁業認証」を導入し、選択肢を与える
これらはすべて、魚を獲りすぎないように管理し、資源を減らさないように科学的根拠を持って漁獲する仕組みです。
その結果、魚が世代交代を繰り返し、資源量が維持・回復していきます。
日本がやっていないこと
- TACは存在するが、漁獲実績の倍以上に設定され、事実上無制限
- サイズ規制がほとんどなく、小さい魚まで獲ってしまう(成長乱獲)
- 枠の設定自体が「漁業を邪魔しないように」設計されており実効性ゼロ
- 違反や密漁の取り締まりが甘く、違法流通も横行
そのため日本は資源を失っただけでなく、海外の研究や教育の場では「資源管理に失敗した代表例」としてしばしば取り上げられているのが現状です。
つまり、日本は世界から「どうすれば魚がいなくなるか」を示す反面教師と見られています。
世界の成功例
ノルウェー:1980年代に乱獲で崩壊しかけたタラ資源に対し、科学調査に基づいた厳格な漁獲枠を導入。資源は回復に転じ、2010年代には安定した漁獲を実現。
オーストラリア:アワビやロブスターで、漁獲枠とサイズ規制を厳格運用。資源回復と高付加価値の輸出産業化に成功。
クロマグロ(国際管理):WCPFCの厳格な漁獲制限により、2010年代に「絶滅危惧」とされた資源が2017〜2023年に生産的水準まで回復。
温暖化説と資源管理の現実
温暖化が魚の分布や回遊に影響を与えること自体は科学的に否定できません。
水温変化によって漁場が北上したり、沿岸での出現時期が変わることは事実です。
しかし、それは全体から見れば些細な問題にすぎません。
世界の成功例が示しているのは、資源管理を徹底すれば温暖化による変化など大きな障害にはならないということです。
逆に「温暖化のせいだ」としてしまえば、原因を自然現象に押しつけるだけで、資源管理の改善という具体的な対策は何ひとつ打たれません。
日本の漁業はすでに衰退を続けており、資源は枯渇寸前にまで追い込まれているのです。
結論──魚は戻せる
日本は世界第6位のEEZを持つ漁業大国であり、本来なら豊かな海を利用できる立場にあります。
にもかかわらず、資源管理を怠ってきた結果、1980年代に世界一だった漁獲大国から、今やEEZが日本のわずか1割しかない韓国にすら抜かれるほどに衰退しました。
しかし希望はあります。クロマグロのように、科学的根拠に基づいた漁獲制限を導入すれば資源は回復します。
ノルウェーやオーストラリアの成功が示すように、資源管理を徹底すれば漁業は十分に持続可能です。
魚が減った本当の原因を直視し、「温暖化のせい」ではなく正しい資源管理へと舵を切ること。
それこそが、次世代に豊かな海を残す唯一の道です。
参考文献
- 水産庁「漁業・養殖業生産統計」(2024年版)
- FAO「The State of World Fisheries and Aquaculture」(2022)
- ICES 報告書(2020)
- WCPFC 報告(2017–2023)
それではまた。


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