
マルスズキ=シーバスは広い地域に分布し、ルアー釣りのターゲットとして人気の高い魚ですが、持ち帰るサイズに迷うことはありませんか?
本記事では、科学的根拠に基づいて「キープサイズ」と「リリースサイズ」について解説します。
目次
スズキの釣れる時期と産卵期
スズキは「セイゴ → フッコ(ハネ) → スズキ」と呼び名が変化する出世魚で、関東・関西などでその名付けに違いがあります。温暖な地域では一年を通じて釣れるターゲットですが、釣れるサイズや場所には季節ごとの変化があります。
特に注意すべきは産卵期(12月〜3月ごろ)で、地域差はありますが、最盛期は1〜2月にかけてです。
この時期は成熟個体が産卵のため沖合へ移動するため、沿岸では釣りにくくなる傾向があります。
そのため、冬から春にかけては釣果が落ち込みやすく、接岸するのは産卵に関与していない若齢の小型個体が中心となります。
成長速度と成熟サイズ
※本記事におけるサイズはすべて全長(Total Length, TL)で表記しています。学術文献では体長(Standard Length, SL)が用いられる場合もありますが、釣り人にとって分かりやすいよう換算して統一しています。
スズキは成長が早く、1年で30cm、2年で40〜45cm、3年で50〜55cmに達する個体もいます。
ただし、成熟のタイミングは性別によって異なります。
- オスは45〜55cm程度で大部分が成熟し、2〜3年齢で繁殖に参加します。
- メスは成熟が遅く、70cm前半では一部が未成熟の可能性があり、75cm以上でようやく成熟率がほぼ100%になるとされています。
| 全長(cm) | 年齢(目安) | 成熟割合(オス) | 成熟割合(メス) |
|---|---|---|---|
| 〜44cm | 〜2歳 | 〜30% | 〜10% |
| 45〜54cm | 2〜3歳 | 60〜85% | 30〜60% |
| 55〜64cm | 3〜4歳 | 90〜95% | 70〜85% |
| 65〜74cm | 4〜5歳 | 97〜99% | 90〜98% |
| 75cm〜 | 5歳以上 | 100% | ほぼ100% |
成長乱獲と世界の資源管理──なぜ未成熟個体は逃がすべきなのか
「成長乱獲」とは、魚が十分に成長して市場価値が高まる前や、産卵を経験する前に過剰に漁獲してしまうことで、個体の成長と資源の再生産を妨げる状態を指します。この問題は世界中でかつて深刻な課題となりましたが、現在では多くの国がこのリスクを認識し、未成熟個体を獲らない資源管理の仕組みを整えています。
一方、日本ではスズキ(フッコ・ハネ)を含め、多くの魚が古くから日常的に食べられてきました。
現在、日本の沿岸資源は世界的にも例のない速度で減少していることが複数の研究で明らかになっています。
その一因は、「未成熟の魚を持ち帰ることのリスク」が十分に理解されていない点にあります。
ここからは、スズキにおける成長乱獲の実態と、その生物学的な背景を詳しく見ていきましょう。
スズキの場合、メスは75cm未満では未成熟の可能性が残り、産卵を経験していない個体が多く含まれます。
この段階で釣って持ち帰ってしまえば、一度も子を残すことなく失われてしまいます。
魚の数は自然に増えるのではなく、産卵して子が生まれることでしか増えません。
その前に釣って持ち帰れば、資源は確実に減っていくのです。
小型を釣る → 一度も繁殖せずに失われる → 次の世代が生まれない → 資源が減る → さらに小型しか釣れなくなる
キープとリリースの基準
| 全長 | 判断 | 解説 |
|---|---|---|
| 〜69cm | リリース | 未成熟の個体が多く含まれるため |
| 70〜74cm | できるだけリリース | 成熟個体が増えるが、メスには未成熟が含まれる可能性あり |
| 75cm〜 | キープ可 | オス・メスともに成熟済み・繁殖済みと考えられる個体 |
この基準は、「その魚が次世代を残すチャンスをすでに得たかどうか」を重視しています。
見た目でオスかメスかを見分けることは困難なため、メスの成熟率を基準にスズキ全体のキープとリリースサイズを考えます。
迷ったときは、「この魚はもう産卵を経験しただろうか?」と自問してみてください。
繁殖経験済み、子孫を残している可能性が高い75cm以上をキープ対象とすることが、最も科学的で合理的な判断となります。
未来を考える
- スズキは成長が早く、オスは比較的早期に成熟する
- メスの成熟は遅く、75cm未満では未成熟の可能性が残る
- 75cm以上の個体をキープ対象とし、それ以下はできる限りリリースを
- 迷ったときは「この魚はもう産卵しただろうか?」と考えて判断を
今逃がした一尾が、未来の釣り場を豊かにしてくれるかもしれません。
釣り人の感覚やその場の気分で「なんとなくリリース」「なんとなくキープ」してしまうのではなく、科学的根拠に基づいた判断を、一人ひとりが持つことが求められています。
出典
- 独立行政法人水産総合研究センター(2007)「スズキ資源の生物学的特性」
- 木村伸吾・山崎充哲・大橋崇(2004)「瀬戸内海におけるスズキの資源動態」『水産増殖』52巻
- 水産庁(2023)「沿岸漁業の現状と課題(令和5年度漁業白書)」
- FAO (2022). “Growth overfishing: A definition and impact.”
- 水産庁「我が国周辺水域における重要資源の成熟サイズ・成長速度資料」
それではまた。


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