こんにちは。Johnです。

本記事では、メバルの産卵時期や成熟サイズなど科学的な根拠に基づいて、釣り人がとるべき正しいリリースの基準について解説します。

卵ではなく稚魚を産む魚──メバルの繁殖の特徴

メバル(クロメバル・アカメバル・シロメバル)は卵胎生という珍しい繁殖形態を持っています。

オスから精子を受け取ったあと、メスの体内で受精・孵化が行われ、稚魚の姿で出産します。

つまり、釣った魚のお腹が膨らんでいれば、それはすでに交尾を終え、出産を目前に控えた親です。

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その個体を持ち帰れば、生まれるはずだった1万尾の稚魚が失われ、将来の親になるはずだった魚を確実に減らすことになります。


出産時期は「冬〜春」だけではない

文献では、メバルの出産時期は2〜4月とされていますが、これはあくまで平均的な傾向に過ぎません。

実際には、水温・地域差・種の違い・年ごとの変動により、5〜6月にも抱卵した個体が確認されています。

たとえば愛媛県農林水産研究所の調査(2007年、瀬戸内海西部)では、6月上旬に稚魚を体内に保持する個体が複数確認されています。

これは、釣り人の間で「1月を避ければ安全」という認識が広がっていることに対し、注意が必要であることを示唆する事例です。

また、広島県水産海洋技術センターや香川県水産試験場でも、地域によって産仔時期が大きくずれることが報告されており、「時期」でなく「個体の状態」で判断すべきという考えが支持されています。

稚魚の生き残り率はわずか0.1〜1%未満

メバルは1回の出産で5,000〜15,000尾もの稚魚を産みますが、自然の中で生き残って成魚になれるのは、ほんのわずか。

たとえば1万尾のうち100尾(1%)が成魚になれば上出来で、条件が悪ければ1尾(0.01%)しか残らない年もあります。

つまり、たった1匹のメスを守れば、数千〜1万尾の稚魚が生まれるチャンスが残されます。
そのうちの数十〜百尾が運良く生き残って成魚になりますが、実際に親になれる個体は、その中でもごく一部に限られると考えられています。
これは、性成熟前の死亡、釣獲、繁殖に参加できない個体が多数いるためで、保守的に見積もれば、1万尾の稚魚のうち将来親になれるのは10尾に満たない可能性が高いです。

※出典:水産研究・教育機構『メバル類の資源評価(2021年)』、瀬戸内海漁業管理研究会資料 ほか


成長乱獲とはなにか──なぜ「産卵前」に獲ってはいけないのか

成長乱獲とは、魚が十分に成長し、産卵する前に獲られてしまうことで、資源と利益の両方が損なわれる状態のことです。

魚は一度でも産卵すれば、子孫を残す可能性があります。

しかし、産卵前に釣られてしまえば、その個体は一生のうちに一度も子を残さずに終わります。

これが繰り返されれば、資源は確実に減っていきます。

世界中の漁業管理では「最低でも一度は産卵させてから獲る」ことが基本原則とされており、釣りにおいても同様です。

釣り人の中にはリリースを実践している人も多くいますが、「なんとなく17cmだからリリース」「小さいから可哀想」という感覚的な判断にとどまっているケースも少なくありません。
しかし、本当に大切なのは、なぜそのサイズでリリースすべきなのか、自分で説明できることです。

どのサイズが産卵経験を持ち、どこからが成長乱獲にあたるのか──その根拠を理解し、他の釣り人にも伝えられるようになることが、釣り人としての責任ある行動につながります。


メバル3種の成熟サイズと“安全なキープ基準”

種類 性成熟開始サイズ 安全なキープ基準
クロメバル 18〜20cm 22cm以上
アカメバル 20〜22cm 23〜24cm以上
シロメバル 17〜19cm 21〜22cm以上

※データ出典:広島県水産海洋技術センター調査報告、三重県水産研究所公開資料、水産庁技術報告集(2020)


文献上の「性成熟サイズ」は、あくまで“平均的に成熟が始まるサイズ”であり、すべての個体がそこで繁殖できるわけではありません。

リリース判断では、さらに安全マージンをとった“確実に繁殖経験があるサイズ”を基準とするのが合理的です。


現場で釣り人がとれる判断とは

  • お腹が膨らんだ個体:季節を問わず、リリースすべき
  • 18cm未満:ほとんどが未成熟。成長乱獲に確実に該当する
  • 18〜21cm:一部は成熟している可能性があるが、繁殖経験がない個体も多く、リリースすべきサイズ
  • 22cm以上(クロ・シロ)、24cm以上(アカ):最低一度は繁殖経験がある可能性が高く、乱獲に気を付けて持ち帰り可
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最後に──守る釣りは、次の釣りにつながる

メバルは「1匹の親が数千〜1万尾の命を残す」魚です。サイズだけでなく、その魚が産卵したかどうかに目を向けることは、釣り人が次世代の海を守るためにできる、もっとも直接的で実践的な行動です。

もしあなたが本当に釣りが好きなら、資源を減らすような選択がどれほど馬鹿げているか、そしてそれがいずれ自分の首を絞めることになると理解できるはずです。
科学的根拠に基づいた正しいリリースを実践できることこそが、水産資源が枯渇しつつある日本で、私たち釣り人にできるもっとも重要な行動のひとつです。




それではまた。





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